House【猫様のための住宅】
これは自明のことかと思いますが、私たち人間は猫を「飼っている」わけではありません。猫が生活する聖域に、私たちが居候しているのです。むしろ人間が猫に生かされていると言っても過言ではありません。その存在によって私たちの生活には彩りが添えられ、日々のストレスや悩みは癒されるのです。
猫と共に暮らすための住宅設計では、猫にとっての快適性を最優先に考えることが前提となります。今回は、そのポイントをいくつかご紹介していきましょう。
【安全性の確保】
観葉植物や天井から垂れ下がる照明器具、そして外の世界。好奇心旺盛な彼らは、いろんなものに興味を持ちます。
危険な屋外に脱走しないよう、ベランダや窓には丈夫な柵や網戸を設置しましょう。
また、住宅建築に使用される材料にも注意が必要です。畳や左官材に含まれる防虫剤・防カビ剤、接着剤や塗料などに含まれる有害物質は、時間の経過とともに室内に放散される可能性があります。猫にとって有害な植物や、化学物質なども生活空間から排除すべきでしょう。
【壁面利用】
猫は、高いところにのぼり上から人間を見下すのが趣味の一つです。
運動や遊び場としてのスペースは縦空間を活用することが求められるため、壁にキャットウォークやステップを設置して猫が自由に上下を移動できるようにしましょう。
【窓辺の設計】
「クラッキング」という言葉をご存知でしょうか。
窓辺で外を眺める猫が小鳥や虫を見つけた際に発する特徴的な鳴き声のことで、狩猟本能により興奮している時の声だそうです。全猫好きがメロメロになる瞬間です。
間取り設計の際には、日当たりがよく明るい場所に窓を設け、猫が外の景色を眺めたり日向ぼっこができる空間を作りましょう。ベッドやキャットタワーが設置できるくらいのスペースを確保しておくと喜ばれます。
【耐久性や衛生面の配慮】
我々がいくら優れた爪研ぎグッズを調達しても、壁や柱の研ぎ心地には劣るようです。採用する床材や壁材は傷や汚れに強いものが適しているのはもちろん、張り替えやメンテナンスの容易さも視野に入れて選定すべきでしょう。
また、猫はとっても綺麗好きですから、特にトイレの掃除が行き届いていないと大きくストレスを感じます。猫の毛や砂が溜まりやすい場所をできるだけ減らし、人間が掃除をしやすい家にすることが大切です。
【快適な温度管理】
猫が暮らしていく上でとても重要なのが、住宅の断熱性能です。寒がりな猫が冬にこたつで丸くなるのは有名ですが、夏場はよく床に溶けているのを見かけます。
夏は涼しく冬は暖かい居住環境を整え、猫様に快適なくらしを提供するのが人間の役目であり生きがいのはずですから、家づくりの際にはぜひこだわっていただきたいポイントです。
これらの要点を押さえた計画が実現できれば、猫も人間も快適に暮らせる住宅になるでしょう。
猫との幸せな生活を存分に楽しんでくださいね。
この記事を書いた人
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父が現場監督、母が設計士、兄が大工という生粋の建築一家で育つ。その影響もあってか、幼少の頃のお絵描きと言えば住宅の平面図や空間パースを描いていたという。高校在学時にはインテリアコーディネーターを最年少取得年齢の17歳で合格する。
将来は機能美とデザイン性が共存する、人々の記憶に残るような住宅を手がける設計士を目指している。
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