House【暖房のプロが教える!本当に快適な暖房とは?】
冬の寒さが厳しくなると、家の中の暖房について考える機会が増えますよね。でも、ただ「暖かければいい」というわけではありません。住まいの性能に合った暖房器具を選ばないと、せっかくの暖房が無駄になったり、快適性が損なわれたりすることも。
BlackPepperが標準的に採用するダブル断熱による高気密・高断熱の家で推奨する暖房器具は、「エアコン」と「パネルヒーター」が基本です。

○エアコンについて
まずは「エアコン」。これはもう、日本の宝といってもいいくらいの優れた家電です。その技術の核となるのが「ヒートポンプ」。耳にしたことはあっても、実際のすごさを理解している人は案外少ないのではないでしょうか?

ヒートポンプとは?
空気中の熱エネルギーを利用し、冷媒を圧縮・膨張させながらエネルギーを得る技術です。エアコン、給湯(エコキュート)、身近なものでは冷蔵庫にも使われており、日本が世界をリードする分野でもあります。
これだけではピンとこないと思うので、シンプルに言いましょう。1の電気エネルギーで3~7の熱エネルギーを生み出せる技術です。少ないエネルギーでガンガン暖房できるのだから、省エネでお財布にも優しいというわけです。
しかも、「エアコン」の素晴らしさは、暖房だけでなく冷房までできてしまうこと。
つまり、暖房器具を買ったら、おまけに冷房器具まで付いてきたようなもの。他の暖房器具ではこんなお得感は得られません。

日本には四季があり、冬には暖房、夏には冷房が欠かせません。それを一台でまかない、イニシャルコストもランニングコストも低く抑えられるのがエアコンです。もはや言うことなし、ですね。
…と、ここまではいい話ですが、これは高気密・高断熱住宅に限った話です。
エアコンは空気を温める暖房器具ですが、温められた空気は上へと移動します。すると天井付近の隙間から暖かい空気が逃げ、それに伴い床付近の隙間から冷たい空気が流入…。
せっかく温めた空気を自ら捨て、外の冷たい空気を招き入れてしまうわけです。こんなことをしていては、暖房効率が落ちるのは当然ですよね。
つまり、気密性の低い家ではエアコン暖房は不向きということになります。

○パネルヒーターについて
次に「パネルヒーター」。こちらもエアコンと同じく「ヒートポンプ」を利用した暖房器具で、機種によっては冷暖房を一台でまかなえるものもあります。
エアコンと大きく異なるのは、パネルヒーターは「輻射熱」を利用する点です。
エアコンは空気を温めますが、パネルヒーターは赤外線を放射し、人や物に直接熱を伝える仕組み。分かりやすく言うと、炎天下で直射日光を浴びたとき、日陰と比べて暑さを感じるのと同じ原理です。
薪ストーブも同じ仕組みですが、パネルヒーターはじんわりポカポカとした温もりが特徴。

温風を出さないため、ホコリを巻き上げず、アレルギー対策としても優秀です。換気をしても熱が奪われにくく、温度ムラができやすい窓際に設置すれば、コールドドラフト(窓際の冷気の流れ)を防ぐこともできます。
さらに、パネルヒーターは空気を温めないため、湿度が下がりにくく、過乾燥を防げるのもポイント。冷房機能付きのものなら、わざと結露を発生させて湿気を取ることも可能で、まるで洞窟のような心地よい涼しさを体験できます。


快適性という点では、エアコンを上回ると考えていますが、デメリットもあります。
・イニシャルコストが高い
・パネルが意匠デザインに影響を与える
ただ、それを差し引いても、住環境としてはエアコンより上位に位置付けられる暖房器具です。
○よくいただくご質問
最後に、よく質問をいただく「床暖房」について解説します。
私たちは床暖房を採用することはほとんどありません。理由はシンプルで、快適な住環境を目指しているのに、床暖房は「快感」を提供する暖房だからです。
エアコンは「対流」、パネルヒーターは「輻射」によって熱を伝えますが、床暖房は「輻射」と「伝導」の両方を兼ね備えています。これだけ聞くと「何が問題?」と思うかもしれませんが、局所的な「伝導」による熱伝達は、意外と厄介なのです。

確かに、寒い外から帰ってきたとき、足元が暖かいのは至福のひととき。ですが、これを私は「快感」と呼びます。
人間の足裏には汗腺が多く、体温調節のために汗をかきます。ところが、床暖房の熱が足裏の発汗を妨げるため、体温調節がうまくできず、最終的に「暑い」と感じることがあるのです。
また、家の中ではみんながずっとリビングでゴロゴロしているわけではありません。家事をする人は料理をし、洗濯物を干したり畳んだりと体を動かします。動き回っている人にとって、足元がずっと温かいのはむしろ不快です。

昔の家に住んでいる人にとっては、足元の冷えというのは死活問題に思えるでしょうが、実際に性能の良いお家に住んでみるとそれほどよいものではないことがわかります。
もし新築で床暖房にして快適だと言っている人がいれば、そのお家は…かもしれません。
そして最大の問題は、暖房効率の悪さ。
熱は「温度の高い方から低い方へ移動する」ため、床を温めても、結局は床下(基礎部分)の冷たい方へどんどん逃げていくのです。つまり、エネルギーを無駄に垂れ流している状態。これを省エネと呼んでよいものか。おまけに、イニシャルコストもランニングコストも高い。これでは、導入するメリットが(今のことろ)ありません。

○最後に
以上、長々と失礼しました。
ただし、これはあくまで現時点での話です。技術は日々進化し、今日最高と思っていたものが、明日には二番手に落ちることもあります。最近では加湿機能付きのエアコンも登場していますしね。
より良い住環境のために、これからも勉強を続けていきます。
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