DATA
大阪からの移住先として安曇野市有明の別荘地が選ばれた。これまでの都会のマンション暮らしからは一変するロケーションと住環境で、家族のライフスタイルを大切にしつつも、新しい刺激をとりこむ「変化」。この両立は設計の軸となっている。家を取り囲むように、木々が植えられ見上げると木漏れ日が差し込む静寂に包まれたロケーション。様式にとらわれないモダンな外観とロケーションの相性を感じられるよう努めた。
自然と生まれた木々の縦ラインと建物のバランスを保つために、急勾配の切り妻屋根で高さを強調しグラデーションを作る。外壁は暗めのモノトーンに仕上げ木々の生み出す世界観を崩さないよう配慮。この家族のライフスタイルには家の外で得る経験が欠かせない。なぜなら、子供に都会では感じられない緑を肌で実感させてあげること、これこそがこの土地を選んだ決め手だからだ。
内部のインテリアの構成にも、この「両立」というテーマに沿っている。住み慣れた大阪での暮らし。それを引き継ぐにふさわしいシンプルで洗練された間取り。シナベニヤで仕上げられた壁天井には電球色のライトが当たり、都会では感じにくい温かみと優しさのある空間に。窓からは切り取られた写真のように木々を眺めることができる。2階部分は急勾配屋根を活かし斜天とし、この空間の広がりは煌びやかな意味とはまた違うラグジュアリーさを演出した。
温熱環境には特に関心を寄せられた。当社が標準的に採用しているダブル断熱工法だが、その意味を深く理解し、エネルギー消費のことまで細かくご相談をいただいた。そして今回、お施主様の強い希望で超高断熱住宅に薪ストーブをインストールするという新しい試みも行った。UA値(外皮平均熱貫流率)がわかれば、過去の気象データと照らし合わすと、この家を快適な温度に保つための必要なエネルギー量がおよそ計算できる。薪ストーブのような高出力暖房機はこのレベルの住宅には向かない(そもそも必要がない)。単純に計算上はそう考えられるが、それでも本物の火から得るものは熱エネルギーだけではなく、受け手によって様々だろう。これが住宅環境にどのような効果をもたらすか、私にとっても今後目が離せない住宅となった。
- 所在地
- 安曇野
- 構造
- 木造軸組構法
- 建築面積
- 69.56㎡
- 延床面積
- 139.12㎡
- 竣工年月日
- 2023年月
- 用途
- 住宅
- 壁
- HGW16K210mm
- 天井
- HGW18Kブローイング300mm
- 床下
- HGW16K140mm
- 玄関ドア
- 高断熱玄関ドア InnoBest D50
- 窓
- トリプルガラス樹脂サッシ
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