DATA
築20〜30年程度の家が並ぶ住宅街には、古い建物が取り壊されちらほらと新築住宅が出来始めていた。この住宅もその内のひとつだ。
建築は常に制限の中で
初めてこの敷地に足を運んだ時の印象は、東西の両隣はコンクリートブロックで仕切られ、南面には道路と延々と続く住宅、この環境のどこと暮らしを結びつけるか悩んだ。しかし、幸いにも北面には川が流れ、季節の移り変わりがはっきりわかるほどの山が見える。この経験から北側と家のあり方について考える設計が始まった。
北側の選択に込められた理由と設計プロセス
家族が集まるスペースを北側に設けることは、お施主様も頭にはあったようだが同時に不安も感じていた。3Dパースや北側リビングの資料を集め、納得してもらいながら計画を進めた。ただ私は初めからこの選択に不安はなかった。もし窓から見える景色が見たくないものであればそれほど苦痛なものはないし、大開口窓でガラス選びを慎重に行えば部屋の明るさも確保もできる。むしろパッシブハウスでない限り南面リビングにそこまでこだわる必要性を感じない。遮るのが難しい直射日光で、住環境のコントロールを難しくさせるよりも、ふんわりとした明かりが包みこむ北側空間は心地が良く、目の前に広がる庭は夏場でも子供の遊び場にぴったりだ。
なるべく強い日陰を作らないよう、建物の大屋根は北側が水下になるよう片流れ屋根に。建物の配置も道路からのセットバックを短くし、なるべく北側に広く外からの目線を感じないプライベート空間を確保。北側リビングに隣接しテラスも設けた。日光を浴びて疲れた子供達が、川のせせらぎを感じながら屋根の下でひと休みする姿が想像できる。LDKのリビング部は一面を畳仕上げとし、段差もつけた。シンプルな空間にメリハリが生まれ、座卓を囲む姿がどこか懐かしさを感じさせる。床から天井まである窓からは、山々の季節の移り変わりを感じられ、目の前の庭で遊ぶ子供達を眺めながらリビングでくつろぐ時間は、この家族のライフスタイルには欠かせない要素と考えた。
- 所在地
- 長野市
- 構造
- 木造軸組構法
- 建築面積
- 75.1㎡㎡
- 延床面積
- 115.93㎡㎡
- 竣工年月日
- 2023年8月
- 用途
- 住宅
- 壁
- HGW16K210mm
- 天井
- HGW18Kブローイング300mm
- 床下
- HGW16K140mm
- 玄関ドア
- 高断熱玄関ドア InnoBest D50
- 窓
- トリプルガラス樹脂サッシ