House【断熱材選びで失敗するとどうなる?種類と性能を徹底解説】

住宅建築における断熱材は、居住空間の快適性やエネルギー効率を左右するとても大切な部材です。

現在、国内外で使用されている断熱材は多岐にわたりますが、一般的には「発泡プラスチック系」「繊維系」に大別することができます。

この2つのタイプにはそれぞれ固有の特性があり、建物の断熱性能や耐久性に大きく関係します。

では、それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

 

発泡プラスチック系

「発泡プラスチック系」の代表例は、フェノールフォームやポリスチレンフォーム、発泡ウレタン等が挙げられます。

その名の通り、樹脂を発泡剤の化学反応により発泡させたもので、水に強く軽量であることが特徴です。

ただ、熱に弱いというデメリットがあり、引火すると有毒ガスの発生や爆発の危険性があるため、火災時には十分注意が必要です。

 

 

  

繊維系

「繊維系」には、国内シェアの約半数を占めるグラスウールや、ロックウール、セルロースファイバー等の断熱材が挙げられます。

セルロースファイバーは主に粉砕した古紙から構成されており、木質繊維断熱材と同じような特徴を持ちます。

対して、グラスウールはガラスを、ロックウールは無機質の鉱物を原料としており、耐久性や防音性に優れていることが特徴です。

 

繊維の隙間に大気を閉じ込めているため、置換作用による断熱性能の劣化もありません。

※ 断熱材における置換作用とは:発泡プラスチック系の断熱材などに含まれる熱伝導率の低いガスが大気と入れ替わってしまい性能が低下すること。

 

最近では、セルロースファイバーやウッドファイバーなど、海外発祥の自然素材(有機質)から構成される断熱材は、サステナブルの観点から日本でも関東を中心に普及傾向にあります。


しかし、ここにも注意すべき点があります。

生態系が非常に豊かな日本において、自然素材の断熱材はシロアリやバクテリアの影響を受けるため、分解されやすいということを忘れてはいけません。

当然これらの対策はされているわけですが、その方法として防カビ剤やホウ酸塩が数十%含まれる材料が、本当に自然素材として敬愛するべきものなのかは疑問です。

 

 

家具や内外装の仕上げとは違い、日常生活の中で目にすることがないところで重要な役割を担っているのが断熱材です。

仕上げ材は劣化しても簡単に取り替えることができます。

ですが、壁内部の断熱材は状態を確認することが難しく、交換するとなれば非常に大掛かりな工事となります。

そのため、住環境を支える部分に経年劣化の起こり得る素材を使うべきでないと私は考えています

 

 

このように、現在市場に出回っている断熱材ひとつとっても様々な特性があります。

これらの材料の特性を熟知し、適切に使用することができる設計者・施工者はどれだけいるのでしょうか。

「自然素材だから優しい」「数値が高いから高性能」といった表面的な情報に踊らされ、間違った使い方をした結果、ご自宅の壁内で深刻な問題が生じることは容易に想像されます。

私たち建築に携わる者が正しい知識を身につけ、お客様に最適な提案を行うことはもちろん大切です。

 

 

しかし、住宅の購入はお客様にとって人生で最も大きな投資の一つです。

できる限り正しい情報を入手し、建築会社がその材料の特性にどう対応しているかを見極めるスキルを持っていて損はないでしょう。

次回は、私たちが使用しているグラスウールの「黒歴史」も含め、なぜグラスウール断熱にこだわるかをお伝えしたいと思います。

 

この記事を書いた人

庄村光央
庄村光央インテリアコーディネーター
父が現場監督、母が設計士、兄が大工という生粋の建築一家で育つ。その影響もあってか、幼少の頃のお絵描きと言えば住宅の平面図や空間パースを描いていたという。高校在学時にはインテリアコーディネーターを最年少取得年齢の17歳で合格する。
将来は機能美とデザイン性が共存する、人々の記憶に残るような住宅を手がける設計士を目指している。