House【リフォームこそ気にしたいデザイン力】

近年では資材や人件費の価格高騰で新築需要が落ち込み、リフォームの需要が拡大しているというニュースをよく耳にします。
時代の流れですのでそれ自体を否定も肯定もしませんが、私自身色んな住宅を見てきた経験の中で非常に残念に思うことがあります。
それはリフォーム工事が下手すぎる会社がとても多いこと。

 

 

既存建物にただただ新しく必要なフォーマットを何にも考えずに追加するものだから、プロでなくても誰が見たってリフォームをしましたというのが丸わかり。
増築の場合には屋根や外壁の収まりについても乱雑で醜いものをたくさん見かけます。

これは私自身の持論ですが、本来リフォームというのは既存住宅の付加価値を上げるものではなくてはならないと考えています。
むしろデザイン面ではプラスになる可能性の方が低いと言っていいほど、設計が難しい。

機能面での向上は新しい設備で簡単に行えても、違和感を植え付けられた建物が気の毒です。

では、なぜこのようなことが起きてしまうのか考えてみましょう。

私の考えでは、主に二つの理由があると思います。

一つ目は、既存建物の考察力・設計力のないメーカーが多い。
新築ですら魅力的な設計ができない会社が、リフォーム工事において力を発揮できるとは到底思えません。
リフォームのデザインは難易度が高く、新築での経験が不足している業者がそれを成功させるのは非常に難しいでしょう。

 

 

二つ目は、エンドユーザーがリフォームという選択をした背景です。
新築ではなくリフォームをするということは、さまざまな理由が考えられますが一番多い理由としては、「コストパフォーマンスよく今よりも機能向上したい。」ではないでしょうか。
見た目にはあまりこだわらず、機能が改善されれば満足してしまうことが多いのです。

しかし、このアプローチでは、住宅の外観が損なわれ、結果としてリフォームが「ドレスダウン」を引き起こす原因となります。

もちろん、自分の家をどのようにするかは個人の自由ですが、私はあえて言いたいのです。「リフォーム工事を行う際には、その決定が住宅の価値にどのように影響するかをよく考えてください」これはリフォーム業者だけでなく、エンドユーザーにも当てはまることです。

家は消費ではなく投資です。これは新築だけでなく、リフォームにも言えることです。今後、リフォーム住宅が次のオーナーへと引き継がれていくことも十分に考えられます。住宅市場の変化に伴い、リフォームもまた、長期的な価値を考慮した投資として捉えるべきなのです。

 

 

リフォームをご検討の際は、デザインと機能を兼ね備えたバランスの取れた施工を行う会社を慎重に選んでください。デザインにもこだわることで、建物の価値を下げるリスクを避け、むしろ資産価値を高めることが可能です。

私は昔の建物を見るのも、設計に携わることも本当に大好きです。だからこそ、少しでも残念な家づくりが減る世の中を望んでいます。

 

この記事を書いた人

竹内恵一
竹内恵一空間デザイナー
1987年生まれ|2級建築士・東京にてショップデザイン専攻
地元長野に戻ってからはグラフィックを扱う企業へ就職するも、空間デザインの世界が諦めきれず、数年後には起業を果たしBlackPepper LLPを設立。軽井沢の別荘建築で現場の経験も積みながら、デザイナーとしての道へと本格的に歩みを進める。2017年6月には株式会社BlackPepperを設立。同社取締役デザイナーとして、主に住宅・店舗設計を手がけている。

一見、住宅と店舗ではかけ離れているような分野だと思えるが、考え方や求められていることが違う分、別視点からの柔軟な発想を両デザインに落とし込むことができている。今もなお両立しているこのスタイルは妥協のない空間づくりへの姿勢の表れであり、今後も理想を描き続けるための核とも言えるだろう。