House【家は3回建てないと理想の家にならない!?】

 

この仕事をしていると、よくこの言葉を聞くことがあります。今ではすっかり一般論として定着してしまいましたが、こういう気持ちになられた方はどのような経緯で住宅を建てられたのでしょうか??

あくまで『推測』で、私なりに考えて見ました。

 

正直、率直な意見としては「そりゃそうだろう…」と思ってます。

 

私が設計の立場で最も気を使っていることが2つあります。

①「住居の快適性」
②「住宅のデザイン性」

この2つはその他に重要なことがあっても、絶対に削ってはいけない最重要項目だと考えています。

 

ひとつめの「住居の快適性」は、高気密高断熱により家中どこでも快適な室温が保たれ、エネルギー消費を極力下げることを目的とします。弊社では北海道並みの断熱性能を基準に設計しています。

 

他社のハウスメーカーさんと話をしていると、そこまでやっても北海道じゃないですからねぇ笑

なんて言われることもありますが。

 

私的には笑い事じゃありません。当然の選択だと考えてます。なぜなら長野県は標高が高いので、寒いんです。あたりまえすぎて呆れてます。緯度は違えど、内陸で標高の高い長野県は、場所によっては日本一の最低気温も記録することもしばしばございます。

これだけ過酷な地域長野県で、住居の快適性を一番に考えることは、メーカーとしての責務であることは言うまでもありません。そして断熱は、やっただけの効果がちゃんとお金で返ってきます。断熱をきちんとやると、温度調節のためのエネルギーを多く必要としないので、冷暖房にかけるランニングコストは格段に減らせます。はじめにお金はかかっても、きちんと回収できる範囲で最大限やれることをやるのが、本当にコストパフォーマンスがすぐれていると言えるのではないでしょうか。

 

菅平気象データ
札幌気象データ

 

 

そして次に「住宅のデザイン性」とは、お客様の趣味趣向が反映された、愛着をもてるデザイン性を有しているか否か。愛着のあるものは、時がたって汚れてきたり、最悪多少の不便があっても大切にします。物を大事にする行為は、物理てきなことだけでなく、そのものに対する気持ちも大事にすることに繋がります。

 

例えば、50年前のエアコンもついていないような古い車をとても大切にしているお父さんにとっては最新機能が搭載されて、運転もしやすいコンパクトカーじゃ満足できないのです。お父さんにとって、その車のデザインはきっとかけがえのないものでしょう。住宅のデザイン性も私は同じだと思います。50年先でも愛着を持てる家かどうかは、その後マイホームに対する満足度に大きく関わってくるのではないでしょうか。

 

「家は3回建てないと理想の家にならない」は、購入時ではなく、住みつづけてあらわれる気持ちです。
購入時にはみなさん満足されていたのに、その後不満に変わってしまうのは最初にイメージしていたものと違ったときなんです!

 

 

 

マイホームを検討しているお客様が気にすることの代表例として

■土地の立地
■住宅の坪単価

お気持ちはよくわかります。これから何十年も住む場所ですから、当然気になるところだとは思います。私自身マイホームを建てる時には、それなりに気にしたポイントでもあります。

ですが。これが最重要項目の上に並んでしまうとは大変なリスクだと考えます。もちろんとことんご納得が得られるまで、ご検討いただいてよいのですが、これらを優先するがあまり、私が先ほど申し上げた点を、後回しにしてしまいがち。

しかし、よくお考えください。

 

その土地が本当に住みやすい場所なのでしょうか?

 

私は、以前立地条件がすごく気に入って、とある戸建て賃貸に引っ越した際「子供の声がうるさい」と匿名の手紙がポストに連日入れられたことがあります。これってすごく怖いですよね…それからは夜は必ず窓をしめて、子供にもなるべく音のたつ遊びを控えさせていました。

住宅の建築費でいえば、子供がたくさんいるので部屋が多めにつくれる大きい家にしたいが、購入予算の関係で、初めから坪単価の安いローコスト住宅を検討していた友人に、ちょっとしたリフォームの依頼いただき、現在の光熱費の聞いたら、弊社で建てた住宅の倍以上のランニングコストがかかっていました。しかも廊下とリビングで温度差が10度以上もあり、おそらく真冬にお子さんが2階の子供部屋へ行くことはないんだろうなぁ。と考えてしまったり。ローコスト住宅は確かに安く購入ができますが、コスパが悪すぎ…

 

 

 

現在の日本では、これから住宅の購入を検討されている方が、メーカーを決定するまでに実際に足を運んだ会社の数は、なんと“1.4社”と言われています。一生のうち一番高い買い物と言われてる、マイホームを建てるメーカー選びなのに、ほぼ初めの一社で決めてしまっているんです。

 

それは先ほど上げた【土地の立地】【住宅の坪単価】

この2点でほぼメーカー選びを終えてしまうからなのではないでしょうか。
土地に建築条件などついてたら、もう他を検討する余地もないですからね。

これでは、「家は3回建てないと理想の家にならない!?」というのが頷けます。

 

だからこそ、私は数ある重要なことの中で、はじめに申し上げた【住居の快適性】【住宅のデザイン性】この2点を最重要に持ってくることが大事だと考えいます。なぜなら、この2点は住んでみないと“わからないこと”ではなく、設計の段階で“わかること”だからです。

 

また、これはすべてのお客様の共通認識として、『今の時代住宅の性能はどこで建てても担保されている』と思われている方が多くいらっしゃいますが、はっきり申し上げます!!まったくそのようなことはありません。今だにサッシだけペアにして20年前の施工方法と変わっていない会社は山ほどあります。

 

だからこそ、【住居の快適性】【住宅のデザイン性】が本当に自分自身とマッチしているかどうか判断するには、1社でメーカー選びを終えてはいけないんです。何社も見比べて、心から優秀だと思える会社を選んでください。

 

営業担当が良い人だった!
〉大事なことです!!
〉でも二の次です。設計者はその人ではありません。

 

いい土地だけど建築条件が!
〉決めたいところです!!
〉でもお客様にあったメーカーは、お客様が選ぶべきです。

 

家は3回建てないと理想の家にならないんでしょ?
〉そんな悲しいことは言わないでくださいm(__)m

 

いやっ!言わせないために設計施工側の努力と、お客様自身の努力でこんな言葉は死語にしましょう!
これから新築やリフォームを検討されているかたは、ぜひこのことを忘れずにメーカー選びをしていただけたら幸いです。

この記事を書いた人

竹内恵一
竹内恵一空間デザイナー
1987年生まれ|2級建築士・東京にてショップデザイン専攻
地元長野に戻ってからはグラフィックを扱う企業へ就職するも、空間デザインの世界が諦めきれず、数年後には起業を果たしBlackPepper LLPを設立。軽井沢の別荘建築で現場の経験も積みながら、デザイナーとしての道へと本格的に歩みを進める。2017年6月には株式会社BlackPepperを設立。同社取締役デザイナーとして、主に住宅・店舗設計を手がけている。

一見、住宅と店舗ではかけ離れているような分野だと思えるが、考え方や求められていることが違う分、別視点からの柔軟な発想を両デザインに落とし込むことができている。今もなお両立しているこのスタイルは妥協のない空間づくりへの姿勢の表れであり、今後も理想を描き続けるための核とも言えるだろう。