House【リフォーム費用の予算感とは】

 

以前いただいたご相談をもとに、耐震や断熱などの対策を施す場合のリフォームにかかる費用を掘り下げていこうと思います。

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・戸建中古物件をフルリフォーム

・築50年の平家で35坪程度

・必要な耐震補強や断熱対策など全て含めたらどのくらいの費用か

・不動産業者に確認したが、「大体1,000万円から」というアバウトな返答しか得られず

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耐震補強・断熱工事を含めた工事の場合、フルリフォームでおよそ新築住宅の7割のコストが目安(その辺りを目指す)となります。

 

いくらの中古物件を購入するかにもよりますが、建物をタダ同然で手に入れたと考えても7割以上のコストをかけるとリフォームする価値は薄く、それ以下では耐震・断熱共に不十分な見た目だけのリフォームになるというロジックです。

 

例として、新築コストが100万円/坪のメーカーであれば70万円/坪になるので、35坪×70万円で2,450万円の予算が必要となります。※建物の本体価格の例

 

 

実際には屋外の繋ぎ込み配管や住設機器など既設が使えるのか、新設が必要なのかで金額はさらに変動します。

 

また、昭和56年を栄に旧耐震基準と新耐震基準に別れるのですが、ご予定されている住宅は旧耐震基準の建築になります。

 

つまり基礎から躯体まで現行の耐震基準とは違う設計なので、これを現在の規格に乗せて耐震補強リフォームしていくと莫大な予算(新築コストを越す)が必要です。

 

となると中古住宅を購入しリフォームするというメリットそのものがなくなってしまうのが実際のところ。

 

 

それでは耐震をあきらめて断熱だけ補強するという考えに及ぶのですが、それでも2,000万円近いコストがかかるとなると、いつ地震が来て倒壊するかわからない家にそこまでコストをかける意味があるだろうか?という事実に直面します。

 

これらのことを加味し、リフォームなのか新築なのか、ご検討されるのがよいと思います。

 

 

それでは築年数の古い住宅に価値はないのか?というと決してそんなこともありません。

 

例えば古民家再生をいう事例をよく耳にすると思いますが、築100年以上の伝統建築ならではの趣や佇まい、歴史的価値、そこに暮らし寄り添う人生の豊かさなど上記ロジックの枠を超えたお金では買えない価値というのも存在します。

 

 

どうしても建物は壊したくないが予算をかけれない場合には、部分改修という手段もあります。

 

2階建ならメインで生活をする1階部分のみ断熱リフォームをして暮らしやすくするなど。

 

このようにリフォームひとつとっても、お客様のご要望と暮らし方に合わせてご提案の内容が変わるので、一概にいくらでできるというのは言えないのが正しい答えだと思います。

 

不動産屋さんがおっしゃるような価格帯のリフォームは、外壁やクロスなど目に見えるところのみ新品にして生まれ変わったようにするもので、それはリフォームではなく模様替えの範疇。

質問者様が望むそれとは違う形なのかもしれませんね。

この記事を書いた人

竹内恵一
竹内恵一空間デザイナー
1987年生まれ|2級建築士・東京にてショップデザイン専攻
地元長野に戻ってからはグラフィックを扱う企業へ就職するも、空間デザインの世界が諦めきれず、数年後には起業を果たしBlackPepper LLPを設立。軽井沢の別荘建築で現場の経験も積みながら、デザイナーとしての道へと本格的に歩みを進める。2017年6月には株式会社BlackPepperを設立。同社取締役デザイナーとして、主に住宅・店舗設計を手がけている。

一見、住宅と店舗ではかけ離れているような分野だと思えるが、考え方や求められていることが違う分、別視点からの柔軟な発想を両デザインに落とし込むことができている。今もなお両立しているこのスタイルは妥協のない空間づくりへの姿勢の表れであり、今後も理想を描き続けるための核とも言えるだろう。